のんちのポケットに入れたい大切なもの

「みぃつけた!」な音楽、もの、ひと、ことばを綴る日記帳

「飲み込まれたらあかんよ」。

父からの突然のSOSを受けてから10日経った。

 

持病を抱えながら、認知症がどんどん進行している年上の妻と二人暮らしを続けることの限界を目の当たりにして、「このままやったらお父ちゃんが死ぬで」と強く説得して、認知症の妻を老人保健施設へ緊急入所させた。

 

再婚して以降、ずっと2人だけで暮らしてきた父は、ほぼ「抜け殻」状態になった。確かに介護のしんどさからは解放されたけれど、妻の存在が目の前から突然なくなったことの喪失感のほうが数倍大きく、家のなかを歩き回ったり、「どうしても入所しなければならなかったのか」と私を何度も問い詰めたり、ベランダから妻の入所した施設のある方向を眺めてため息をついたり・・・。

 

「ほっとかんといてくれ」と頼まれるより先に、「これはひとりにしたら、それこそ死んでしまうかもしれん」と思うほどの状況が最初の数日続いた。やむをえず、埃だらけの物置き部屋に、ぺっちゃんこの布団を敷いて父宅に数日泊まったけど、これを続けたら私が倒れるなぁと思ったので、一旦自分の家に帰った。

 

「ごはん、どないしたらええねん。僕は何もできへん」と丸投げしてくる父に呆れたけど、それでも「栄養失調ですよ」と主治医に言われたことは無視できず、手作りのあったかい栄養たっぷりのものをと思い、スーパーで材料をどっさり買い込んで、それこそ「のんち食堂」の出前バージョンよろしく、奮闘した。

 

ところが、父は「こんなにたくさん、見ただけでしんどなる」とため息をついて、迷惑そうな顔をした。これにはさすがにプチンときた。「ほんなら、もう好きにしたらええやんか」と言いそうになったけどがまんして家に帰り、関東に暮らす弟に電話で思いっきり愚痴を吐きまくった。「ええ加減にしてほしいわ!!」とか、離れたところで聞かされた弟も辛かったと思うけど、そのときは、そうせずにいられなかった。

 

できるだけ楽しみもみつけながら、自分を犠牲にせずにやっていこうと思っていたけど、このままではとても不健全だと感じたので、「持続可能なスタイル」を一緒にみつけていってもらわんとできないよってことを父に伝えた。「そうやな、お前が倒れたらどうしようもないもんな」とか言っていたけど、でも、思いっきり体重をかけてくるような姿勢にあんまり変化はなかった、今も、ない。

 

でも、父の変化を待ってだけはいられないので、「たくさん見たらしんどくなる」というなら、別の方法で食事のサポートをしなくっちゃと考えて、初めて「宅配冷凍おかず」なるものを注文した。それと、進化したコンビニの1人分のお惣菜の数々も、試しに買ってみた。「1食分ずつあっためたら食べられるから、量で圧倒されることもないやろ?」とちょっと嫌味も込めて父に電話で説明した。

 

父は明らかに「え?なんでそんなことになんの?」みたいな感じで、わたしが自分から離れていくことへの危機感を瞬時に察知したようだった。わたしは、そういう「危機感を覚えて動揺しているひと」にめっぽう弱いのだけど、できるだけ気持ちを動かさないように努めた。もちろん、電話だけではだめだろうな、と思うので、週明け、冷凍室に入ったおかずを一緒に温める練習などをしてみようと思っているところ。

 

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同時進行で、父の体調への不安に即応してもらえるように、父宅の近くの訪問看護ステーションから看護師さんと理学療法士さんに来てもらう契約をした。これは「大当たり」だった。最初はコストの面で難色を示していたけど、「わたしはいくらすぐに駆け付けても2時間はかかるし、仕事してたら行かれへんときもあるで?」と半ば脅して導入した。自分も訪問看護師として仕事をしていた経験があるけど、患者家族の側から眺めてみると、その存在の頼もしさに目がハートになりそうだった(笑)。

 

当初は明日の日曜日、父宅へおかずを作りに行くことにしていたけど、それ、辞めた。そして、諦めさせていた相棒ちゃんと、約束どおり、ショッピングとランチの女子会を敢行することにした。早起きして、ちょっと車で遠出するつもり。

 

それと、ゆうべは久しぶりに手芸もちょっとの時間だったけどやってみた。

 

「リュックサックの修繕」を頼まれたので、古い着物をほどいて活用してみた。まだ始めたところだから、まだまだ色々と細工を加えていくつもり。夜な夜なミシンまで出してきて没頭した。

 

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そんなふうにして、自分のくらしは守りたい。

 

いつも「ごもっとも」なアドバイスをくれるひとから言われた。

 

「のんちゃん、おとうさんのことに飲み込まれたらあかんよ。自分の人生は自分が一番大事にしないとあかんよ」だそうだ。

 

ふむふむ、なるほど。

 

 

・・・・・・正論、である。