のんちのポケットに入れたい大切なもの

「みぃつけた!」な音楽、もの、ひと、ことばを綴る日記帳

離職してるのには、理由がある。(加筆しました)

連休明け、新型コロナの感染拡大が起きているという報告を複数受けた。初期のように、いちいち新聞やニュースに取り上げられることはなくなっているけど、事態は決して好転などしていなくて、むしろ深刻さを増している。現場のひとつの判断の遅れや、「読み」のズレが、本当に大きな影響を生む。でも、そのひとつの判断、行動を迅速にしていくことを常に求められる状況は、その役割を担うひとに多大なる負荷をかける。その負荷が、からだやこころに及ぼす影響はとても大きい。それなのに、そのことへの支援が、あまりに不足していることを、一日中痛感させられた。

 

そして、そのような現場にいると、本当に腹立たしいのだ。

 

首相が、看護協会に「オリンピックに500人の看護師の派遣」を要請したという話。

 

首相が「現在離職中の看護師は少なくない人数いると認識している。だから500人の派遣は可能ではないかと認識している」という話。

 

あのね、説明するのも腹立たしいけどね。

 

看護師(正・准看護師ともに)が離職しているのには、理由があるんですよ。サボってるわけじゃないですよ。「仕事してない看護師が家にたくさんいるはずだから、そういうのを派遣してくれればいいだけのこと」みたいに聞こえるのは、わたしだけじゃないと思う。そのことに、無性に腹が立つのも、わたしだけじゃないと思う。

 

これは実際に聴いた、ある離職中の看護師さんの言葉。

 

「毎日テレビで最前線で新型コロナの患者さんに対応している看護師さんたちを見ていると、何もできていない自分が不甲斐なくて、ひとりで泣いてしまうんです。こんな私でも、何かできるんじゃないか、しないといけないんじゃないか、そう思うと、じっとしていられなくなって」。そう言って、その看護師さんは、わたしの前でもポロポロと泣かれたのだった。

 

そんな看護師さんは、全国にたくさんおられるだろうと想像する。そして、意を決して、現場に戻ってくれた看護師さんも、少なくないだろうとも思う。それは、ものすごく尊い決断だと思うし、たとえそれが自分の病院にでなくとも、同じ看護の世界で働く者のひとりとして、感謝と歓迎の気持ちで迎えたいと思う。

 

だけど同時に、それでも離職しているのには、理由があると、わたしは思う。その理由は、ほんとに「それぞれの事情」。自分は働きたくてたまらなくても、家族のなかの事情で復職が叶わないひとがたくさんいる。看護師を必要とする現場は、病院だけでなく、在宅にも、施設にも、学校にも、保育園にも、たくさん、たくさんある。そして、「フルタイムの常勤では難しいけど」「夜勤はできないけど」、看護の世界に戻りたいと思っているひとたちも少なくない人数いる。加えて、学校を卒業して、資格試験に合格して、現場に出てみたけれど、「学びの場」と「実際の現場」とのギャップや人間関係で小さなつまづきをしたことをきっかけに、現場から離れてしまっている若い仲間たちの存在も、とてもとても気になる。そういう、いろんな、いろんな、深い理由や事情が、みんなあるのだ。看護職や介護職を、社会にとって非常に大切な役割と認識するなら、「なぜ離れてしまっているのか」をもっと考えてほしい。考える前に、まずもって知ろうとしてほしい。「戻りたい」「戻れる」と思える現場をつくるのは、今現在、その現場で懸命に働いている人たちだけの課題ではない。いまの政治は、「いま働いている看護師」のことを大切にしていないだけでなく、「いま働いていない看護師」のことも、ものすごく蔑ろにしていると、ゆうべこの文章を書いて、一夜明けて読み返して、あらためて沸々と怒りがわいてきたので、この段落、大きく加筆修正した。こんな状況のなかで、「家にくすぶってる看護師さん、オリンピックもあるんだから、休んでないで出てきてくださいな」というのは、あまりにひどすぎやしないだろうか?

 

あらゆるところに、想像力がなさすぎる。

 

そのことを、毎日、これでもか、これでもか、と痛感させられる。

 

それでも、ごはんしっかり食べて、ちょっと一息ついて、明日もまたがんばるのは、そんなふうに思いながら、ちょっと手抜きの晩ごはんをかきこんで、お風呂にザブンと浸かって、バタンキューの仲間たちが、全国にたっくさんいるだろうと想像するからだ。

 

そんな仲間たちへ、そして、いつかそこに加わってくれるであろう、未来の仲間たちへ、晩ごはんを終えた、遅めの台所から、同志愛を込めて。

 

元気でいてね。

がんばりすぎずに、がんばろうね!!

 

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