父のことでだいぶ気持ちがささくれてしまったので、本来、家の掃除もせねばならなかったのだけど、「リセット」を口実に、春の奈良に行ってきた。
行きたいところは2つあって、食べたいものは1つだけ決めていた。
行きたいところ、1つ目は写真展。
韓国の写真家、アン・ジュン氏の代表作が「入江泰吉記念奈良市写真美術館」にやって来たから。(アン・ジュン氏のことを紹介する文章をみつけたので、貼り付けておきますね)
アン・ジュンインタヴュー「死に向かう過程としての生、その瞬間の美しさを写真に撮ること」 | ARTICLES | IMA ONLINE
2つ目は、何度目かの志賀直哉旧居。
私は読書は好きだけど、文豪たちにはまるで縁がない。挑戦してみようと買ってみた何冊かは、本棚のちょっと隅っこのほうにひっそり立ったまま、随分経つ。なのに、不思議にも、気持ちをリセットしたかったり、いろんな感情で騒がしい自分をなだめてあげたいときは、ふと、行ってみたくなる。
今回もありがたいことに、貸し切り状態だった。2階の窓から若草山を眺めているとなぜだかすーーっと心が静かになったり、わざと北向きに配置された机のある1階の部屋でひんやりした空気を吸って何となく背筋が伸びるような気がしたり、中庭の木々と晴れた空に心がふわーっと解放されていくみたいで、とてもいいひとときだった。
食べたかったものは最後に残して、通りがかりに「食いしん坊の勘」でお昼ごはんに選んだお店のホットドッグが、すごく丁寧に作ってあって、「うまっっ」と何度も言いながら味わった。
グリルで焼いた玉ねぎの皮以外は、野菜のひとかけも残さずいただいた。
満腹の幸せを感じながら伸びをしたら、真上に広がる、たまらない青と桜色のコントラスト。
足元には、可憐な一群。
お気に入りのシェア本屋さんでは「きょうの1冊」は妥協して選ぶことをせず、手ぶらで出てきた。
そして仕上げは、大大大好きなあんみつ屋さん。
店主さんの立ち振る舞いも、無駄のないキッチンも、すべてがガサツなわたしには手の届かない「お手本」。
そして何より、このあんみつ。
あんこのやさしさとブレのなさ、添えたフルーツの下ごしらえの丁寧さ、極め付けは寒天の完成度。これはもう、お召し上がりいただくほか、お伝えする術をもちませぬ。
気付けばお日さまも傾きかけていて、帰りの大渋滞をギリギリのタイミングで回避して帰宅した。
一日歩いて、眺めて、食べて、感じたこと。
わたしは、わたしを、肯定しよう。
答えはとてもシンプル、だ。