東京のバス停のベンチで路上生活をしていた大林三佐子さんが頭を殴られて亡くなってから、あっという間に一年が過ぎたということに、恥ずかしくも、新聞の記事で気付いた。
自分自身が彼女だったかもしれないと、リアルに想像できるより、わたしはずっとずっと余裕のある暮らしをしている。おしゃれができて、相棒ちゃんは、お財布を極端に心配せずに、スーパーのかごに欲しいものをポンポンと入れる。毎日あったかい湯舟に手足を伸ばして、たまには映画を観に行ったりもする。
今も仕事の帰りに頑固一徹おかんが「天ぷら揚げるから、寄って行き」とメールをくれて、目の前で揚がるお芋さんの天ぷらを頬張っている。
三佐子さんに、この飾りっ気のないおかんの天ぷらを、ふーふーいいながらかぶりつかせてあげられたらよかったのに。彼女の姿を見かけたわたしに、それができたか。おかんなら、間違いなくそうする気がする。
「あんた、ごはん食べたか?」
ひとを見殺しにしない世の中を、ほんとはみんな求めているはずだと、かなしさのなかにも、希望を見つけたくなる、そんな記事です。