相棒ちゃんの本命の志望校で見学会が開かれるので、いま、校門まで一緒に歩いて見送ってきた。
わたし自身は、そのようなことを頑固一徹おかんにしてもらったことはないし、そのことを心細く思ってもいなかったけど、相棒ちゃんはすこし人種が違うようで、「おかあさん、ついてきて」と頼んできた。「おんなじ職業のおかあさんの目で見てほしい」という理由もあるようだけど、感染対策で、保護者家族は校内に入ることはできない。「外からだけでも、見て」なんて、ちょっと苦しい理由を微笑ましく受け止めて、喜んで仕事を休んで同行した。
で、いま、学校近くの商店街の喫茶店で涼みながら、初めて向田邦子さんのエッセイを読んでいる。
別に嫌いだったわけではなくて、なんとなく、読んでいなかった。そして、読もうと思ったきっかけも、何だったか、思い出せないぐらいのこと。
文章への第一印象は、とても、いい。
ほかのお客さんの会話がちょっと聞こえてしまいながらも、冷たい珈琲と、ちょっと暗めの照明と、全部が、いい。
ふと、思ったのだけど、相棒ちゃんを、未来への扉の向こうへ送り出したら、こんなふうな静かな時間がたくさん訪れるのかもしれないな。
わちゃわちゃと賑やかに暮らしている「いま」を、慈しんで、大事にしようって、あらためて、しみじみ、思っています。
梅シロップ6日目の朝。
梅の実の皺が、なんともありがたく、いとおしい。